規程や技術仕様書を英訳したあと、章見出しが 第3章 Corporate Culture のようになっていることがあります。後ろの語句は訳されているのに、先頭の「第3章」は残ったまま。マウスでドラッグしても、その文字だけを選べません。
これは一文の翻訳漏れではありません。複数レベルのリスト(アウトライン番号)が表示する番号ラベルと、作成者が見出しに直接入力した文字は、Word では別の要素です。
見出しは2つの要素でできている
「第3章 企業文化」のうち、「企業文化」は段落テキストなので通常の翻訳対象になります。一方、「第3章」は番号設定がテンプレートに従って表示しているものです。数え方が漢数字で、テンプレートが 第%1章 であれば、翻訳ツールが段落内の文字だけを置き換えても、接頭辞は日本語のまま残ります。
これは「翻訳後もリストが残り、番号が連続する」こととは別の問題です。多くのツールがうたうのは構造が残ることです。章を1つ追加すると、以降の番号も 4、5、6 と自動的に振り直されます。利用者が困るのは見えるラベルです。「第…章」が Chapter 3 になっていない状態です。構造は保たれていても、ラベルが日本語のまま――よくある未完成な仕上がりです。
番号をいったん通常のテキストに変換してから翻訳すれば回避できますが、翻訳後に章を追加・削除しても番号は自動更新されません。何十もの見出しを手で直すことになります。
ルールで変換できるものと、階層ごと訳すもの
SimplifyAI では、自動番号を2種類に分けて扱います。
- 語を含まず、数字と記号だけのものは、ルールで変換します。
一、は1.になり、漢数字はアラビア数字へ、全角の読点は英語で一般的なピリオドへ置き換えます。この処理は翻訳モデルを経由しません。 - 「第」「章」「部」のような語を含むテンプレートは、通常の翻訳対象として同じ翻訳フローに送ります。言語ごとの固定対応表には依存しません。そのため英語では
Chapter %1やPart %1、フランス語ではChapitre %1、スペイン語ではCapítulo %1になります。訳文には番号プレースホルダー(%1)を残す必要があります。削除・変更された場合や原文のまま返された場合、その階層の番号は動かしません。
後者は意図的です。第3章 の「第」と「章」だけ残して数字だけアラビア数字にしたような中途半端な結果は、元の 第3章 より見栄えが悪くなります。階層全体を原文のまま残し、翻訳前の用語確認や翻訳後の校閲で対応した方が確認しやすいためです。
納品時の見た目に関わる点もあります。
- 実際に使われている番号定義とレベルだけを処理します。 文書内に数百の番号定義が含まれていても、1つの複数レベルのリストは最大9レベルです。本文で使われていない定義まで翻訳に回すと、利用枠を消費するだけでなく、確認リストに関係のない項目が増えます。
- 接頭辞のフォントは対象言語に合わせます。 テンプレートが
Chapter %1に変わったあと、英語見出しの横に数字だけ日本語フォントで出ることはありません。見出し内に日本語が残る場合は、その部分のフォント設定は維持します。 - 対象言語でも原文の番号ラベルが自然な場合は、この変換をスキップします。 たとえば中国語原稿を日本語へ翻訳する際、
第%1章は日本語でも自然なため、そのまま維持できます。
目次ページにも、すでに描画済みの「第3章」が残っている場合があります。番号設定だけを変えると、本文は Chapter 3 になっても、WPS では目次に古い番号ラベルが出続けます。目次側の扱いと、未翻訳の番号ラベルを残した方がよいケースについては、Word目次が翻訳されない原因と対処法をご覧ください。
現在できること・できないこと
自動処理できるのは、自動番号内の数え方とテンプレート語の識別、変換可能な番号の直接変換、語を含むテンプレートの翻訳とカウント位置の検証、変換に成功した階層へのラテン文字フォントの適用です。
語を含むテンプレートの訳文は、翻訳前の確認時に一度見ることをおすすめします(Chapter %1 が社内表記に合うか、チームによっては Section %1 を希望する場合もあります)。モデルが判断できないレベルは原文のまま残るため、必要なら番号設定を手動で変えられます。
本文中に手入力された「第一章」は通常の文章として翻訳され、番号設定の処理対象ではありません。数値を確実に読み取れない特殊なカウント形式は、章番号の誤りを避けるため、無理に再描画しません。
向いている文書
多階層の見出しが多い規程、契約書、入札書類。納品先に原文の接頭辞を残せないコンサルティングレポート。同じ原稿から複数の欧州言語版を作りつつ、言語ごとに「第 → Chapter/Chapitre/Capítulo」の対応表を管理したくないマニュアル。
まとめ
選択できない見出しの文字は、多くの場合、段落内にはありません。自動番号を含む Word を SimplifyAI にアップロードし、見出し左側が Chapter 3 に変わっているか、階層全体が「第3章」のまま残っているかを確認してください。どちらも、中途半端に混在した状態より確認しやすい結果です。